交通事故の休業補償:派遣の場合の相場や計算方法は?

こんにちは、管理人です。交通事故による受傷のため、通常のように働くことができなくなった場合の補償として、「休業損害」があります。

被害者が派遣社員の場合も働いて収入を得ているので、交通事故のために仕事を休んだ場合は休業損害を請求することができます。

しかしながら、派遣は有期雇用契約であるため、治療期間中に契約期間が満了して更新されなかったり、新しい派遣先が紹介されなかったりして、治療が完了する前に派遣切れとなる可能性があります。

このように治療が完了する前に派遣切れで無職状態となってしまった場合も、休業損害はもらえるのでしょうか。

今回は、派遣の休業損害について詳しく解説します。

派遣とは

派遣とは、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で仕事をするといった就業形態のことです。

そのため、給与は派遣会社から支給されますが、実際の仕事に関する指示等は派遣先企業から受けることになります。

また、労働時間や給与に関する交渉は派遣会社とすることになり、交通事故で仕事を休んだ場合の「休業損害証明書」の作成も、派遣会社に依頼することになります。

派遣の一般的な休業損害算出方法

まず、派遣の一般的な休業損害算出方法について説明します。

休業損害の計算式

下記の条件を両方満たすものは、「給与所得者」として休業損害を算出することとなっているため、派遣の場合も一般的には給与所得者と同様の算出方法となります。

 ・1ヶ月の就労日数が20日以上
 ・1日の就労時間6時間以上

この場合、休業損害は下記の計算式で算出します。

 休業損害 = 1日あたりの基礎収入額 × 休業日数
      =(事故前3ヶ月分の給与収入合計額 ÷ 90日) × 休業日数

給与収入合計額を算出する際の注意事項

給与収入合計額の算出にあたっては、下記の点に注意しましょう。

 ・手取り額ではなく、税金や公的保険料控除前の「税込み額」で計算する。
 ・通勤手当、時間外手当、夜勤手当等の諸手当も含まれる。

また、1日あたりの基礎収入額(事故前3ヶ月分の給与収入合計額 ÷ 90日)が、自賠責保険基準の「5,700円」を下回った場合は、「5,700円」が1日あたりの基礎収入額となります。

なお、給与収入額の裏付け資料として、「休業損害証明書」のほかに「源泉徴収票」も必要となりますので、派遣会社に発行してもらいましょう。

休業日数についての注意事項

休業日数とは、交通事故による受傷のため実際に仕事を休んだ日数です。派遣先に発行してもらった「休業損害証明書」により、事故で仕事を休んだ日数を証明します。

休業日数については、下記の点に注意しましょう。

 ・有給休暇を使って入通院した場合も休業日数に含まれる。
 ・交通事故による欠勤期間中の休日・祭日も休業日数に含まれる。

有給休暇については、実際には休業による減収はないものの、自身が望まないタイミングで有給休暇を使わざるを得なかったという考えから、休業損害が請求できます。

また、連続した欠勤期間中の休日・祭日は休業日数に含まれますが、欠勤日が不連続の場合、欠勤日の間にある休日・祭日は休業日数に含まれません。

派遣の休業損害における問題点とは

派遣は様々な企業との有期雇用契約であるため、給与所得者と同じ休業損害算出方法では問題がでてくる場合があります。

収入が安定していない問題

1つの会社に継続して務めるサラリーマンなどの給与所得者の場合は、時期によって収入が大きく異なることはあまりないと言えます。

しかしながら派遣の場合は、仕事が多く入れば収入も多くなりますが、仕事が少ない時期や契約が切れて仕事がない時期は収入が減るなど、収入が安定していない可能性があります。

従って、たまたま事故前3ヶ月に仕事が少なかった場合に「事故前3ヶ月分の給与収入合計額」を基礎とすると、不当に低い基礎収入額になってしまうといった問題があります。

治療期間中に派遣切れとなる問題

派遣は有期雇用契約であるため、3ヶ月や6ヶ月などの短期で契約期間が満了することがあります。

交通事故によるケガの治療が長引いて治療期間中に契約期間が満了してしまった場合、契約が更新できなかったり、新しい派遣先を見つけられなかったりして、治療期間中に派遣切れとなる可能性があります。

このような場合、派遣切れで一時的に無職となってしまった期間の休業損害をどうやって請求するのかということが問題となります。

派遣社員の休業損害裁判例

給与所得者と同じ休業損害算出方法で問題があるようなケースの裁判では、交通事故前の経歴や収入、再就職や定職就くための活動などをもとに、休業損害を認めるべきかを判断しています。

定職に就く蓋然性が高いケース

事故前3ヶ月の実収入が少ないものの、経歴や収入、再就職や定職に就くための活動などから、“定職に就いていた蓋然性が高い”と認められるケースでは、賃金センサスの平均賃金を基礎とする場合があります。

賃金センサスとは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたものです。ただし、賃金センサスの平均賃金100%が必ず認められるというわけではなく、個々の事例に合わせた割合で認められています。

賃金センサスの平均賃金7割を基礎とした派遣社員の裁判例を紹介します。

【裁判例:東京地裁平成16年7月5日判決】
派遣社員(男・44歳、平衡機能12級12号、外貌醜状12級13号、併合11級)につき、事故前3ヶ月の収入は62万円余(年収250万円余)であり、事故前3年間の収入を裏付ける証拠はないものの、過去(事故4~6年前)には平均賃金を超える収入を得ていた時期もあり、44歳では再就職の可能性もあるとして、賃金センサス男性学歴計前年齢平均の7割396万1370円を基礎としました。

契約更新の蓋然性が高いケース

治療期間中に契約期間が満了し、派遣切れとなってしまった場合でも、これまでの派遣経歴から、“契約更新あるいは新しい派遣先が見つかる蓋然性が高い”として、契約期間満了後も休業損害が認められる場合があります。

契約期間満了後も含めた休業損害を認めた裁判例を紹介します。

【裁判例:大阪高裁平成20年11月5日判決】
派遣社員(男・29歳、右上肢のしびれ等12級13号認定)につき、事故後に休業したまま派遣契約期間を満了したものの、契約更新制度があり、事故に遭う前は別の派遣先で4年以上継続して勤務していたことから、契約更新がされた蓋然性が高いとして、契約期間満了後も含め、日勤欠勤79日分、夜勤欠勤65日分に早退分を加えた休業損害を算定しました。

派遣の正当な休業損害を請求するために

実際の保険会社との交渉では、基礎収入額が不当に低い金額となったとしても、事故前3ヶ月の実収入か、あるいは自賠責保険基準「5,700円」を基礎とした休業損害しか認められない可能性があります。

また、契約期間満了後に派遣切れしている期間についても、保険会社から休業損害は認められないと言われる可能性があります。

このような場合、これまでの経歴や収入がわかる資料や、再就職や定職に就くための活動(職業訓練を受けているなど)の有無が重要となってきます。

保険会社との交渉が難航する場合は、裁判を起こすことも念頭に置き、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しましょう。

まとめ

今回は、派遣の休業損害について解説しました。

派遣とは、派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で仕事をするといった就業形態のことです。従って、労働時間や給与に関する交渉のほか、交通事故で仕事を休んだ場合の「休業損害証明書」の作成も、派遣先企業ではなく派遣会社に依頼することになります。

派遣の一般的な休業損害算出方法は、「給与所得者」と同様、「事故前3ヶ月分の給与収入合計額 ÷ 90日 × 休業日数」で算出します。

しかしながら、派遣の場合は収入が安定していない可能性があり、たまたま事故前3ヶ月に仕事が少なかった場合、「事故前3ヶ月分の給与収入合計額」を基礎とすると、不当に低い基礎収入額になってしまうという問題があります。

また、派遣は有期雇用契約であるため、治療期間中に契約期間が満了して派遣切れとなり、休業損害をどうやって請求するのかということが問題となります。

給与所得者と同じ休業損害算出方法で問題があるケースの裁判では、交通事故前の経歴や収入、再就職や定職就くための活動などをもとに、休業損害を認めるべきかを判断しています。

定職に就いていた蓋然性が高いと認められるケースでは、賃金センサスの平均賃金一定割合を基礎とした裁判例があります。

また、契約更新あるいは新しい派遣先が見つかる蓋然性が高いと認められるケースでは、契約期間満了後も含めた休業損害を認めた裁判例があります。

実際の保険会社との交渉では、一般的な算出方法以外は簡単には認めてもらえない可能性がありますので、交渉が難航する場合は裁判を起こすことも念頭に置き、必要に応じて弁護士などの専門家に相談しましょう。

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