交通事故の休業補償:無職の場合の相場や計算方法は?

こんにちは、管理人です。交通事故による受傷のため、通常のように働くことができなくなった場合の補償として、「休業損害」があります。

被害者が何らかの職に就いていた場合、働くことができなくなったことによる損害の発生は明確ですが、被害者が事故当時に無職だった場合、休業損害はどうなるのでしょうか。

今回は、無職の休業損害について詳しく解説します。

無職における休業損害の原則

休業損害は、“交通事故で働けないことより実際に減ってしまった収入”を補償するものです。しかしながら、無職の場合は働くことによる収入が元々ないため、交通事故により実際に収入が減ることもありません。

従って、“原則として無職の休業損害は認められません”

ただし裁判例では、“労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるもの”について、一定の範囲で無職の休業損害を認めています。

無職でも休業損害が認められるケースとは

それでは、“労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるもの”の具体的なケースについて説明します。

就職先が内定していた場合

交通事故の直前や直後に就職先が内定していた場合、交通事故に遭わなければ就労していた蓋然性が高いと言えます。

このような場合、就労予定日から就労可能となる日までの休業損害が認められることとなります。

なお、内定していたという事実や、支給予定の給与額を証明するための資料として、「内定通知」や「雇用契約書」が必要です。

積極的に就職活動をしていた場合

交通事故当時は“たまたま無職”だったものの、積極的に就職活動をしていたと認められる具体的な事実があれば、労働意欲があり就労の蓋然性があると言えます。

例えば、下記のような就職活動をしていたという事例について、休業損害が認められた裁判例があります。

 ・事故直前までハローワークに通って面接に参加していた。
 ・転職のために退職後、積極的に再就職先を探していた。

ただし、いくら積極的に就職活動していたと主張しても、就職先が決まっていたわけではないため、加害者側の保険会社に「原則に従い休業損害は認められません」と主張される可能性があります。

例えば、何年間も無職だった人が、「事故当時は積極的に就職活動をしていたからすぐに就職する可能性が高かったはずだ」と主張しても、説得力があるとは言えないからです。

従って、被害者側としては、就労の蓋然性が高かったと主張するために、下記の点について立証や合理的な説明が必要となります。

 ・職歴があり、その際の収入状況について立証できる。
 ・事故当時に無職だった理由について合理的な説明ができる。
 ・事故当時、心身共に健康で働ける状態だったと立証できる。
 ・事故当時、就労できる能力や技術があったと立証できる。
 ・就職に向けた具体的な活動内容について立証できる。

無職の場合の休業損害算出例

無職の場合、個々のケースによって何を参考に休業損害を算定するのかが異なります。

就職先が内定していた場合の休業損害

就職先が内定していた場合は、就職予定先で得られるはずだった給与額を参考に、休業損害を算定します。

就職予定先の給与額を参考にしている裁判例を紹介します。

【裁判例:名古屋地裁平成21年2月27日判決】
アルバイト(女・事故時24歳)について、事故前に就職を申し込んでいた会社から事故後に採用の通知を受けていること、治療期間中に就労を開始したが10日で受傷部の痛みのために休職し、そのまま退職していることなどから、会社から支給される予定だった月額21万円を基礎に症状固定まで7ヵ月分の休業損害を、就労により得た給与約7万円を控除して算定しました。

積極的に就職活動をしていた場合の休業損害

積極的に就職活動中だった場合は、賃金センサスの学歴年齢別平均賃金や失業前の収入などを参考に、休業損害を算定します。

賃金センサスや失業前の収入を参考にしている裁判例を紹介します。

【裁判例1:札幌地裁平成13年11月29日判決】
元大工(男・62歳)について、稼働先を探していたことなどから、大工として稼働する意思と能力があり、専門技術性に照らし後進の指導も含めて稼働先が見つかる可能性も十分あったとして、男性学歴計60~64歳平均の8割を基礎に、症状固定まで323日間329万円余の休業損害を認めました。

【裁判例2:大阪地裁平成17年9月8日判決】
離職して積極的に就職先を探していたアルバイト中の被害者(男・45歳)について、事故がなければ、その翌日にでも職が見つかるというような状況であったとまでは認められないものの、一定期間後には職を得て稼働する可能性があったことまでは否定できないとして、事故前の給与収入額596万円余を基礎に、休業損害を認めました。

まとめ

今回は、無職の休業損害について解説しました。

無職の場合、交通事故で働けないことによる収入の減少がないため、“原則として無職の休業損害は認められません”。

ただし裁判例では、“労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるもの”について、一定の範囲で無職の休業損害を認めています。

具体的には、交通事故の直前や直後に就職先が内定していた場合や、積極的に就職活動をしていたと認められる具体的な事実があった場合に、交通事故に遭わなければ就労していた蓋然性が高いとして、休業損害が認められています。

このような場合、就職予定先で得られるはずだった給与額を参考にしたり、賃金センサスの学歴年齢別平均賃金や失業前の収入などを参考にしたりすることで、休業損害を算定します。

ただし、あくまで原則としては“無職の休業損害は認められない”ため、就労の蓋然性について、具体的な証拠に基づきしっかりと主張していくことが大切です。

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