交通事故の休業損害:自営業や個人事業主で赤字だった場合はどうなる?

こんにちは、管理人です。交通事故による受傷のため、通常のように働くことができなくなった場合の補償として、「休業損害」があります。

自営業者や個人事業主の場合、一般的には前年分の「確定申告書」で申告した所得をもとに基礎収入額を算定し、休業日数を掛け合わせることで休業損害を算出します。

しかしながら、経営はいつも黒字とは限らず、赤字経営の場合もあります。前年が赤字の場合、所得はマイナスであるため、一般的な算出方法では休業損害はゼロとなってしまい、どのように基礎収入額を算定すべきかが問題となります。

今回は、自営業や個人事業主で赤字だった場合の休業補償はどうなるのかについて、詳しく解説します。

赤字の場合に休業損害は認められる?

前述のとおり、一般的な算出方法では休業損害はゼロとなってしまうため、加害者側の保険会社から「前年が赤字だったため、休業損害は認められない」と主張されることがあります。

しかしながら、前年が赤字だったとしても、その事業や労働には何らかの価値があったはずです。また、休業が原因で赤字がさらに拡大したり、固定経費が無駄になったりすることもあるため、前年の赤字を理由に休業損害を一切認めないというのは不合理であると言えます。

多くの事例においても「赤字でも休業損害を認めるべき」という考え方がとられており、「基礎収入額をどのように算定するのか」ということが重要となっています。

赤字の場合の休業損害算出方法

赤字の場合の休業損害は、個々の事情に合わせて、様々な方法により算出されています。いくつかの方法を紹介します。

自賠責保険基準の基礎収入額を用いる方法

自賠責保険基準では、休業損害における1日あたりの基礎収入額は「原則5,700円」と定められています。

従って、赤字申告の場合の便宜的な休業損害算定方法として、5,700円を基礎収入額にするという方法が、加害者側の保険会社との交渉の場において、よく利用されています。

ただし、事業によっては、1年間の売上が「5,700円×365日=208万500円」とは明らかにかけ離れている場合もあります。従って、あくまで便宜的に用いられる算出方法であると言えるでしょう。

固定経費を休業損害とする方法

固定経費は事業を休業しても必ず支払わなければならないため、その分について休業損害として補償するという方法があります。

具体的には、確定申告書添付の収支内訳書に記載されている「地代家賃、光熱費、保険料、租税公課など」の固定経費合計額を365日で割り、1日あたりの基礎収入額とします。

ただし、この方法はあくまで無駄になった固定経費のみを補償するものであり、休業が事業に及ぼす影響は全く考慮されていない点に注意が必要です。

拡大した損害を休業損害とする方法

交通事故による休業が原因で、事故前年の赤字よりも、事故当年の赤字が拡大してしまう場合があります。

このような場合の休業損害算出方法のひとつとして、事故前年の赤字と、事故当年の赤字の差額分を休業損害とする方法があります。

ただし、赤字拡大は必ずしも休業によるものだけではない可能性があるため、赤字拡大と休業との因果関係をしっかりと証明する必要があります。

賃金センサス平均賃金を参考にする方法

前年が赤字だったとしても、事業主の年齢や経歴等から、今後少なくとも同年齢の平均賃金と同水準くらいの収入があったはずだと考えられる場合があります。

このような場合には、「賃金センサス」の平均賃金を参考に休業損害を算出するという方法があります。

「賃金センサス」とは、厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の結果をまとめたものです。ただし、賃金センサス平均賃金の100%が必ず認められるというわけではなく、個々の事例に合わせた割合で認められています。

賃金センサス平均賃金を参考にしている赤字申告の裁判例を紹介します。

【裁判例1:名古屋地裁平成4年7月29日判決】
赤字申告をしていた喫茶店経営者について、妻に専従者給与として120万円、長男夫婦に220万5000円を支払っていたことから、賃金センサスの65歳以上男子平均給与の3分の2以上の収入があったものと認定して、184万5600円を基礎に算定しました。

【裁判例2:大阪地裁平成18年6月14日判決】
個人事業主が赤字申告をしていた事案において、各種商品小売業者全労働者における平均賃金の7割程度の収入が得られる蓋然性が高いとして、321万3840円を基礎収入としました(逸失利益の事例ですが、休業損害の基礎収入計算でも同様と言えます)。

まとめ

今回は、自営業や個人事業主で赤字だった場合の休業補償について解説しました。

前年が赤字の場合、一般的な算出方法では休業損害はゼロとなってしまいます。ただし、前年が赤字申告だったとしても、その事業にも何らかの価値があったはずであり、休業による赤字拡大や無駄になった固定経費なども補償されるべきであると言えます。

そのため、多くの事例で赤字申告だった自営業者の休業損害が認められており、個々の事情に合わせた様々な方法で休業損害が算出されています。

便宜的な方法としては、自賠責保険基準の基礎収入額を用いる方法があります。また、固定経費を休業損害とする方法や、拡大した損害を休業損害とする方法もあります。

このほか、年齢や経歴等から同年齢の平均賃金と同程度の収入があったはずだと考えられる場合には、「賃金センサス」の平均賃金を参考にする方法もあります。

このように様々な方法によって、赤字の自営業や個人事業主でも休業損害が認められることがありますが、赤字だと加害者側が簡単に休業損害を認めないこともあります。

必要に応じて弁護士などの専門家に相談し、休業損害を請求するための根拠となる資料などをしっかり用意するようにしましょう。

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