自動車保険と労災保険はどちらが優先されるの?

こんにちは、管理人です。プライベート中に交通事故が起きた場合、通常は「自動車保険」を使って処理することとなりますが、もしその交通事故が“業務中や通勤中”に起きた場合はどうなると思いますか?

業務中に起きた事故で登場するのが「労災保険」という制度ですが、業務中や通勤中に起きた交通事故の場合は、自動車保険と労災保険のどちらが優先されるのでしょうか?

今回は、自動車保険と労災保険の関係について説明します。

自動車保険と労災保険とはどのような保険?

自動車保険と労災保険とはどのような保険?

まず、自動車保険と労災保険、それぞれの保険とはどのようなものでしょうか。

自動車保険とは

自動車保険は、大きく「自賠責保険」と「任意保険」の二つに分けられます。

自動車保険の種類 内容
自賠責保険
(強制保険)
  • 全ての自動車(二輪・原付含む)に加入義務がある保険
  • 被害者に対する補償のみで、自分や物などへの補償はない
  • 補償の限度額がある(死亡3,000万円、傷害120万円、後遺障害4,000万円)
任意保険
  • 加入が任意で、自賠責保険ではカバーしきれない部分を補う保険
  • 補償範囲は対人だけでなく、自分や搭乗者、車両、物など、多岐にわたって契約することが可能
  • 補償の限度額は契約内容次第

交通事故で相手の過失により怪我をした場合、被害者は相手に対して治療費や慰謝料を払ってもらうための「損害賠償請求権」を取得し、相手の自動車保険を使うことができます。

労災保険とは

労災保険(労働者災害補償保険)とは、業務中や通勤中における労働者の怪我や病気、死亡などに対して保険給付を行う制度です。

業務中や通勤中に交通事故で怪我した場合は、治療費(自己負担なし)や休業損害補償(怪我が治るまでの8割補償)を受けるために労災保険を使うことができます。

自動車保険と労災保険は一緒に使えるの?

自動車保険と労災保険は一緒に使えるの?

それでは、自動車保険と労災保険の両方を一緒に使えるのかと言うと、両方を一緒に使うことはできません。

なぜなら、自動車保険における自賠責保険は「国土交通省」、労災保険は「厚生労働省」が管轄しており、両方とも国が補償する制度であるため、両方を一緒に使うということは、国に対して二重請求することになるからです。

自動車保険を先に使った場合

例えば加害者の自動車保険を先に使って怪我の治療を行ったあと、労災保険を使いたいということになった場合は、先に自賠責保険で使った分が労災保険で「控除」され、不支給扱いとなります。

労災保険を先に使った場合

逆に、労災保険を先に使って治療した場合は、自分が取得していた「損害賠償請求権」が労災保険側に移ることになるため、そのあとに自分が加害者の自動車保険を使うことはできなくなります。

つまり、「損害賠償請求権」を持つ労災保険側が、加害者の自動車保険側に対して治療費を請求することになります。

自動車保険と労災保険のどちらを優先して使うべき?

自動車保険と労災保険のどちらを優先して使うべき?

それでは、自動車保険と労災保険のどちらを優先して使うべきなのか、決まりはあるのでしょうか。

政府の通達では「自動車保険が優先」

法律上どちらが優先という規定はありませんが、政府の通達では「交通事故の場合は労災保険より自賠責保険が優先」と定められており、労働基準監督署に行くと、まず自賠責保険の使用を勧められます。

どちらを使うのか自由に決める権利がある

しかしながら、国民は行政通達による拘束は受けないため、自動車保険と労災保険のどちらを使うのか、自由に決める権利があります。

ただし、労災保険と自賠責保険では、休業損害補償の範囲が下記のように異なっており、労災保険は自賠責保険に比べて休業損害補償が少ないため、加害者が任意保険にも加入しているケースでは、休業補償が多くでる自動車保険を優先することで問題ないと考えられます。

・自賠責保険:過去3か月間の平均賃金の全額
(但し、自賠責保険内では1日19,000円が上限)
・労災保険 :過去3か月間の平均賃金の80%相当額

労災保険を優先した方が良いケースとは

労災保険を優先した方が良いケースとは

一方で、下記のケースでは“労災保険を優先”した方が良いと考えられます。それはなぜなのかを、説明していきます。

労災保険を優先した方が良いケース
ケース1. 自分の過失割合が明らかに大きい場合
ケース2. 過失割合で相手と揉めている場合
ケース3. 車の所有者が運行供用者責任を認めない場合
ケース4. 相手が無保険または自賠責保険のみの場合

自分の過失割合が明らかに大きい場合

自賠責保険では、「自分の過失割合が7割を超えると損害補償が減額される」という決まりがあります。一方、労災保険には過失割合によって減額されるという決まりがありません。

従って、過失割合が7割を超えるようなケースでは、自賠責保険より労災保険を使った方が良いということになります。

過失割合で相手と揉めている場合

過失割合で相手と揉めている場合、示談交渉が長引いて自賠責保険を使いたくても使えない状況になってしまいますが、保険が下りないからといって怪我の治療をしないわけにもいきません。

このように過失割合で相手と揉めて示談交渉が長引く場合は、労災保険を使って早く怪我の治療費を出してもらった方が良いでしょう。

車の所有者が運行供用者責任を認めない場合

自動車保険は、車の所有者(運行供用者)が起こした事故の損害を補償する保険です。

例えば事故相手の乗っていた車が実は盗難車だった場合、使用する保険は“車の所有者の自動車保険”ということになりますが、所有者からすれば「なぜ盗まれた車で起こされた事故について、私の自動車保険を使わなければならないのか」ということになります。

このような場合、相手の自動車保険を使用することは非常に困難となるため、労災保険を先に使用して、後日、労災保険側である労働基準監督署から加害者に対して治療費を請求してもらった方が良いと考えられます。

相手が無保険または自賠責保険のみの場合

相手が無保険の場合や、自賠責保険だけしか加入していない場合、あるいは任意保険に加入していても対人補償が少ない契約の場合、補償範囲や金額で揉める可能性が高くなります。

このような場合、加害者に損害賠償請求するのが困難だと考えられるため、前述4-3のケースと同様、労災保険を先に使用して、労災保険側から加害者に対して治療費を請求してもらった方が良いと考えられます。

診療報酬単価の違いにも注意が必要

診療報酬単価の違いにも注意が必要

自動車保険と労災保険、健康保険では、病院で治療を受けた際の診療報酬単価が下記のとおり異なります。

保険の種類 診療報酬単価
自動車保険 1点20~30円(自由診療扱い)
労災保険 1点12円
健康保険 1点10円

自動車保険で治療すると“自由診療扱い”となり、病院が自由に診療報酬単価を決めることができます。

例えば、労災保険を使えば100万円の治療費だったところ、自賠責保険を先に使ったために診療報酬単価が高くなり、治療費だけで自賠責保険の限度額120万円を超えてしまうかもしれません。

加害者が任意保険に加入していれば足りない分を任意保険で補うことができますが、そうでない場合は加害者が自費で払わなければならなくなり、加害者の支払い能力によっては、足りない分や慰謝料を支払ってもらえない可能性があります。

従って、こうしたケースでは、労災保険を先に使うことで治療費を抑え、慰謝料も支払ってもらえるようにする必要があります。

自動車保険を使っても、労災保険からもらえる補償がある

自動車保険を使っても、労災保険からもらえる補償がある

自動車保険を使って自賠責保険から休業損害補償をもらった場合、前述「2 自動車保険と労災保険は一緒に使える?」で説明したとおり、国に対して二重に請求することになるため、労災保険からの休業損害補償は控除されて不支給扱いとなります。しかしながら、労災保険から全く補償をもらえないというわけではありません。

労災保険の休業損害補償(過去3か月間の平均賃金の80%相当額)の内訳は、下記のとおりとなっています。

休業損害補償(80%)の内訳
休業補償給付(60%)
休業特別支給金(20%)

自賠責保険から休業損害補償をもらった場合、労災保険からの休業損害補償は控除されますが、この控除の対象となるのは、60%に相当する「休業補償給付」部分のみです。残りの20%に相当する「休業特別支給金」については控除を受けないため、自賠責保険から休業損害補償をもらっても、労働基準監督署に申請手続きをすれば別途もらうことが可能です。

手続きをしないともらえない補償であるため、忘れずに労働基準監督署に対して「休業特別支給金」の申請手続きを行うようにしましょう。

まとめ

まとめ

業務中や通勤中に起きた交通事故の場合、「自動車保険」と「労災保険」を使用することができますが、いずれも国が補償する制度であるため、両方を一緒に使うことはできません。

どちらの保険が優先されるのかについて、政府の通達では「交通事故の場合は労災保険より自賠責保険が優先」と定められていますが、国民は行政通達による拘束は受けないため、どちらを使うのか自由に決める権利があります。

加害者が任意保険に加入しているケースでは、休業補償が多くでる自動車保険を優先して問題ありませんが、下記に該当する場合は十分な補償を受けられない可能性があるため、労災保険の使用を検討しましょう。

  • ケース1. 自分の過失割合が明らかに大きい場合
  • ケース2. 過失割合で相手と揉めている場合
  • ケース3. 車の所有者が運行供用者責任を認めない場合
  • ケース4. 相手が無保険または自賠責保険のみの場合

また、自動車保険と労災保険では「診療報酬単価」が異なるため、自動車保険を使うと治療費が高くなり、加害者が十分な任意保険に加入していないと治療費や慰謝料を支払ってもらえない可能性があります。

このような場合は、労災保険を使用して治療費を抑えることが必要です。

加害者がしっかりと任意保険に加入していれば、基本的には自動車保険を優先して使用し、休業損害補償については、労働基準監督署に「休業特別支給金」の申請手続きを行って、労災保険からの「休業特別支給金」も忘れずにもらうようにしましょう。

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