こんにちは、管理人です。交通事故による受傷のため、通常のように働くことができなくなった場合の補償として、「休業損害」があります。
パートやアルバイトの仕事であっても、休業損害は問題なく請求することができます。ただし、就労日数や就労時間、主婦や学生などにより、休業損害の計算方法が異なる場合があります。
今回は、パートやアルバイトの休業損害について詳しく解説します。
目次
パートやアルバイトの定義とは
パートやアルバイトの定義は、「1週間の就労時間が30時間以下」とされています。
従って、1週間の就労時間が30時間を超えている場合は、「給与所得者」として休業損害を算出することになります。
パートやアルバイトの休業損害算出方法
パートやアルバイトの休業損害を立証するために必要な資料と、休業損害算出方法について説明します。
休業損害を立証するための資料
休業損害を立証するための資料として、下記の書面を用意します。
必ず用意するもの | 場合によって必要なもの |
---|---|
・休業損害証明書 ・源泉徴収票 |
・所得証明書 ・賃金台帳 ・確定申告書控え など |
「休業損害証明書」は、勤務先に作成してもらう書面であり、保険会社に用紙が備えてあります。
勤務先が小さな会社であるほど、被害者と会社との人的な結びつきが高くなりやすいため、休業損害証明書の信憑性が低いと判断されやすくなります。そのような場合、所得証明書や、賃金台帳、確定申告書控えなどが必要になることもあります。
基本的な休業損害算出方法
パートやアルバイトの休業損害は、基本的には「事故前3ヶ月間の給与と出勤日数」をもとにして、下記の流れで算出します。
①認定日額の算定 |
---|
「事故前3ヶ月間の給与合計額」を、「事故前3ヶ月間の出勤日数」で割ることにより、出勤1日あたりの給与を算出して、認定日額とします。
認定日額=事故前3ヶ月間の給与合計額 ÷ 事故前3ヶ月間の出勤日数 |
②認定休業日数の算定 |
「事故前3ヶ月間の出勤日数」を90日で割ることにより、事故前3ヶ月間の出勤率を算出し、それを欠勤期間と掛け合わせて、認定休業日数とします。
認定休業日数=欠勤期間 ×(事故前3ヶ月間の出勤日数÷90日) ただし、傷害の態様、職種等を勘案して、「治療期間の範囲内で実治療日数の2倍を限度」に認定可能という例外規定があります。 |
③休業損害の算出 |
上記「①認定日額」と「②認定休業日数」を掛け合わせて、休業損害を算出します。
休業損害=①認定日額×②認定休業日数 |
パートやアルバイトの場合、原則として上記の計算式で算出した“実額”が休業損害となります。仮に認定日額が自賠責保険基準の「5,700円」を下回ったとしても引き上げはされませんので、注意しましょう。
事故前にシフトが既に決まっていた場合
シフト制の仕事で、事故前に休業期間中のシフトが既に決まっていた場合は、休業日数が容易に確定できるため、そのシフトに従って休業損害を算出することもあります。
計算式としては下記のとおりとなります。
休業損害=日給(時給×就労時間)× 休業日数
パートやアルバイトでも給与所得者扱いになる場合
1週間の就労時間が30時間以下のパートやアルバイトでも、下記の条件を両方満たした場合は、休業損害が「給与所得者」扱いとなり、認定日額の算出方法が変わります。
・1ヶ月の就労日数が20日以上
・1日の就労時間6時間以上
このような場合、給与所得者の休業損害と同様に、下記の計算式で休業損害の認定日額を算出します。
また、上記の式で算出した認定日額が、自賠責保険基準の「5,700円」を下回ったとしても、給与所得者扱いであるため、「5,700円」まで認定日額が引き上げられて補償されます。
主婦でパートやアルバイトをしている場合
主婦は“家事従事者”として、交通事故による受傷で家事労働を行えなかった期間について、実収入の有無にかかわらず休業損害が認められています。
従って、主婦でパートやアルバイトもしている場合は、「家事従事者としての休業損害額」と「パートやアルバイトとしての休業損害額」を比較し、いずれか高い額とします。両方を受け取ることはできません。
なお、主婦の休業損害は、算定基準により下記のとおり基礎収入額が大きく異なりますので、注意しましょう。
1日あたりの基礎収入額は「5,700円」となる。
■弁護士基準の場合
賃金センサスの女子労働者全年齢平均賃金をもとに算出する。
学生アルバイトの場合
学生は原則として休業損害が認められていませんが、ある程度継続的にアルバイトをしていたことが立証できれば、休業損害を請求することができます。
ただし、学生の場合は授業や試験と兼ね合いをしつつアルバイトをしており、試験や就職活動のためにアルバイト日数を減らすなど、雇用状態が不安定であると言えます。
従って、過去の就労状況や継続性、試験日程なども考慮した上で、現実的な就労予想時間にもとづく休業損害が認められています。
まとめ
今回は、パートやアルバイトの休業損害について解説しました。
パートやアルバイトも、休業損害を請求することは可能です。休業損害は、休業損害証明書や源泉徴収票などの資料をもとに、原則的には「事故前3ヶ月間の給与と出勤日数」を用いて算出します。シフトが既に決まっていた場合や、そのシフトに従って休業損害を算出することもあります。
従って、パートやアルバイトの場合は、原則として “実額”が休業損害となります。ただし、「1ヶ月の就労日数が20日以上、1日の就労時間6時間以上」だった場合は、パートやアルバイトであっても給与所得者と同様の休業損害算出方法となります。
主婦でパートやアルバイトもしている場合は、「家事従事者としての休業損害額」と「パートやアルバイトとしての休業損害額」を比較し、いずれか高い額を休業損害とします。
また、学生の場合でも、ある程度継続的にアルバイトをしていたことが立証できれば、休業損害を請求することができます。その際は、過去の就労状況や継続性、試験日程なども考慮した上で、現実的な就労予想時間にもとづく休業損害が認められています。
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